【CROSS TALK】2022年の総括

Morita(以下、M)/さ、毎年恒例の総括の日がやってきました。もう1年、早いですね。

Suzuki(以下、S)/1年早いねっていう話になるといつも言うんだけど、50代になると僕らの1年は1/50なんだよね。20代なら1/20。比べたら短いわけですよ。

M/なるほど。

S/電動化の話も去年あれだけ騒いでたけど、1年経っても大して変わってない。電動化については東ヨーロッパとイタリアだっけ? 音を上げちゃったんで、欧州の目的達成はもっと先になるんだろうけど。

M/ですねぇ。

ルノーが欧州のカーメーカーとして、
初のフルハイブリッド車をつくった。

S/この1年で電気自動車のデメリットと言われる航続距離とか充電インフラが日本において進化しましたか? と言われるとそうでもない。こういうことは、本来ジワジワとやっていくべきものなんだけど、ECが先走っちゃったんだよ。まぁ、でも無理なものは無理だし。落ち着くところに落ち着いたのかなって感じ。その点でルノーは賢いなぁと思ったのは……。

M/ハイブリッド(以下、HEV)ですか。

S/そう。ヨーロッパのメーカーがあまり本気出してなかったフルハイブリッドに手を出した。

M/そうですね。ドイツ勢はマイルドハイブリッドですから。あれ、ルノー独自のシステムなんですよね?

S/うーん、そこはね。実は真剣に調べていないので明言はできないんだけど、ルノーだけでやったわけじゃないみたいね。

M/あ、そうなんですね。

S/うん、あまり大っぴらには言えないけどね。いつもルノーの取り組みで思うのは、新しい技術に対して極端にネガティブに反応するときもあれば、その逆もある。このHEVの場合は後者で、欧州では誰もやってないのを「いいじゃん!」ってやっちゃった例。

M/ははは!

S/ルノーHEVがヨーロッパで流行る要件は揃ってるし、実際、アルカナは新車だったので大して乗ってないけど、まったく違和感はなかった。回送で乗ってる範囲内だけどね。

M/そうなんですね。

S/うん、完成度は高いね。ルノー車自体、ここ20年くらい新車で「なんだこれ?」って思う車種はないけどね。

M/まぁ、そうですね。

S/それ以前はあったけど(笑)。

M/あれだけバッテリーEV(以下、BEV)だ! ってヨーロッパのカーメーカーは言ってたのに、水面下でHEV、しかもフルハイブリッドの開発を何年も前から進めていたってことですよね、ルノーは。

S/そういうことだね。

M/トヨタはHEVのパテントを公開してるけど、そこはルノーの矜持があるんでしょうね。

S/そうだね。丸っと真似してるわけじゃないから。

M/ちゃんとルノーの考え方が反映されてる。

S/たとえばダシアのスプリングが中身何か分かんないけど、もしリーフであったらなら。それはそれでいいと思うんだよね。ダシアだから。

M/そうですね。立ち位置がルノーとは違う。

S/普及させるために安く売る必要があるから、ノックダウンに近いような形でやってもぜんぜんいい。でもルノーでそれはやらない。

M/ちゃんと住み分けされてるんですね。

S/だからルノーのHEVには期待してるけど、僕が仕事として扱うものではないんだよね。もちろん、お客さんが欲しいというなら手配するけど。実際、年明けにキャプチャーのHEVを納めるしね。

M/そうなんですね。これからあのHEVは他の車種にも展開されていくんでしょうかね。

S/基本、システムは一緒だから車格的に載るクルマには載せていくんじゃないかな。いまアルカナ、コレオス、ルーテシアに載ってるのかな? ルーテシアがいちばん燃費いいみたいね。

M/まぁ、軽いでしょうからね。カングーには載りそうですけど、トゥインゴには載らないでしょうね。

S/サイズ的にもそうだけど、載せてもデメリットになりそう。

M/まぁ、あれは素直にBEVのほうがいいでしょう。

S/でも、メルセデスはジーリーとつるんだから、メルセデス・ルノー・スマートはもうないと考えると、ルノー自社でどこまでやるのかは気になるね。

 

ほぼ日本専用車のトゥインゴTCe90
欲しい人は買っといたほうがいい。

M/トゥインゴはこの先、どうなるんでしょうね。ガソリン車はなくなるのか。

S/ヨーロッパではEDCは売ってなくて、1000ccのNA MTのみで続いてるけど。

M/何となくそれは残しそうな気がしますね。

S/うん、ないと困る人もいるだろうからね。0.9ターボも欲しいって人もいると思うんだけどなぁ。でも、止めちゃったものを復活させるのも現実的じゃないだろうし。

M/ですよね。

S/日本で受注再開したらしいけど、トゥインゴ90馬力のターボEDCが来てるっていうのはほんとに貴重なことなんで、欲しい人は買っといたほうがいいよ。

M/ですよね。最後のチャンスになる可能性がありますからね。

S/だってあれ、日本に送るためだけにつくってるようなもんだから。日本仕様ってことではないんだろうけど、年間数千台くらいしか売れないのに、わざわざ。

M/イギリスも出してないんでしたっけ?

S/うん、止めちゃってるね。もうほぼ日本専用車。しかもいまは値上げしちゃったけど、かつてはあの値段で売ってたわけだから驚異的だよ。

 

置き型の充電器ってできない?

S/これ、あくまでもウワサなんだけど、ダシアのスプリングって、ジーリー製なのかな?

M/またそれはどこのウワサですか。

S/いや、根拠のない話なんだけど、ルノーとジーリーが共同でBEVをつくろうって話があったんだけど、途中でダメになっちゃって。で、その代わりにダシアがそれを引き継いだって話があって。だからスプリングはジーリーと共同開発したんじゃないかって。

M/設計の段階でジーリーが入ってるってことですか?

S/うん、たぶんスプリングは中国ではつくってないだろうからね。設計だけかもしれない。まぁ、でもジーリーって話が出て急に興味を失ったわけだけども(笑)。

M/ははは。何となく分かる気がします。

S/まぁ、BEVに興味はないけど、行く末はどうなるのかは生温かく見守るんだけど、やっぱカギを握るのはトヨタだと思うんだよ。たとえば全車種にBEVモデルを用意しますってことになったら、一気に普及し出すだろうね。

M/きっと本気出せば、やれるんでしょうね。でも、トヨタとしては「選ぶのはお客様」という方針なので、BEV一色にはしない。水素もやり、電気もやる。HEVもPHEVもやる。あと、内燃機関がなくなっちゃうとそれに携わっている会社が大変なことになるから、一気には進められないんでしょう。

S/あと、インフラだね。水素は大変みたいだけど。トヨタだけじゃ無理だから、イワタニとか川重とかと組んで水素サプライチェーンをつくってやってるし。あとツイージーを乗り倒している僕が感じるのは、課題はスケジューリングと乗ってないときの充電。一軒家の人はいいけどね、賃貸の人は充電どうするのって。もっとお手軽にやれればいいけどね。無理だよって言われかもしれないけど、置き型充電器って開発できないのかな。

M/置き型?

S/そう。賃貸の駐車場にだって電気を引くことができるじゃん。立派なもんじゃなくて、エンジン発電機みたいな感じで持ち運びできるやつ。それを地面に置いて200Vつなげば、そっから充電できる。賃貸の駐車場にこれ置けば充電できますよってなる。

M/おー、新たなビジネスチャンスが(笑)。

 

お上に期待しないで、
トヨタに期待したほうがいい。

M/でも、充電インフラなんて、国が本腰入れれば、すぐできそうな気がしますけどね。まぁ、国もモビリティのことばっか考えてるわけにはいかないでしょうけど。

S/やれると思う。でもやらないのは、自分たちが大変になるからじゃない?

M/というと?

S/たとえば、日本には車検制度があるわけだけど、そこにBEVがたくさん入ってくると、いろんな仕組みづくりが変わってくると思うのよ。少しずつ増えてくる分にはいいけど、爆発的に増えるとたぶんいろんな問題が出てきて困ると思うんだよね。

M/そうか。だから政治家の皆さんはやりたくない、と(笑)。

S/車検のときにクルマのOBDにつないでフォルトだけは読むようにしようって、ちょっと前から言ってるんだけど、実際はそんな制度、ぜんぜん始まらないしね。

M/へぇ、そういう話になってるんだ?

S/そう、やるって言ってるくせにね。車検の印紙代が上がったんだけど、将来的にそういう制度にするための資金づくりのために値上げしたって話もあって。でも、実際何もしてない。

M/そっかぁ。それは知らなかったです。

S/なので、お上に期待しないで、トヨタに期待したほうがいい(笑)。

 

僕らの世代って
モグラ叩きのモグラみたい。

S/これから自動車の修理屋さんは一部を除いて斜陽産業になっていくだろうね。

M/選択を迫られていますよね。BEVの流れに乗るのか、あきらめるのか。大手はそういう流れに乗れるでしょうけどね。

S/この前、同業者から聞いたんだけど、20代の整備士がいるんだけど、クルマに大して興味がないし、仕事もマニュアル通りにやっているだけで、なぜそうなるのか、なぜそうするのかを分かってないんだって。

M/そもそもなぜ整備士になってんでしょうね、その人は。

S/いまそういう時代なんだよ。そんなんだから、自分のクルマも直せない。30代くらいならまだ「この人、やるな」って人いるけど、そっから下はね。いてほしいし、いたら一緒に仕事したいけど、期待はしないほうがいいね。

M/そうかもしれないですね。既存の自動車修理会社はあとどれくらい持つのか。

S/僕の感覚だとあと10年かなぁ。僕らの世代って、モグラ叩きのモグラなんだよね。

M/モグラ叩き?

S/学生のときはバブルだったじゃん。で、就職しようとしたら、バブル崩壊。そんで何とか就職して仕事を憶えた。さぁ、ひとりでできると思ったらリーマンショックでしょ? それでも何とか独立して軌道に乗るかと思ったら東日本大震災。そっからまた立て直して安定したかなと思ったら新型コロナウィルス。きっちり10年ごとじゃないけど、立ち直ってくると叩かれる。だから次は2030年くらいなのかな、と。

M/そうなると今年も来年への希望なし、って感じですけど……。

S/だって、ないもん。

 

来年前半の課題は
サンデロ買う資金を調達すること。

M/でも、ダシアは来年の期待材料にはならない? ドッケールはヒットしましたが、サンデロがちょっとアレでしたよね。

S/ドッケールは特殊なケースだったと思う。あのカテゴリーのクルマって、うちのお客さん、たいてい好きなんだよ。カングー1はいまから乗るのはしんどい。カングー2はデカい。しかも世の中にいっぱいいる。そんな中に「ドッケールあるよ」って。しかも左MT。「いいじゃん、これ!」ってなる。僕の中ではカングー1の左右スライドドアになって爆発的に売れたあの感じに似てる。

M/その路線で行くと、サンデロがルーテシアの代替車になると思ってたんですよね。もはやルーテシアはEDCしかないし、たとえばルーテシア2が好きだった人にとって、いまの現行はちょっと違うよなって。

S/うん、僕もそうなると思ってる。

M/だけど、そうなってないのは何でですかね?

S/僕さ、いろんなことちゃんと考えてやってるフリをしながら、非常に場当たり的なんだよね(笑)。刹那的。

M/というと?

S/サンデロの1台目のときは補助金の関係で妙にお金があったんだよ。で、サンデロやろうって決めて。普通のでいいか。いやいや、いまお金あるからステップウェイいけちゃうよ。じゃあ、どうせならアルミつけたいよね、アレもコレもってなってほしい物全部付けちゃった。クルマ来ました。カーセンサー載せました。カーセンサーはそのクルマの値段を載せなきゃいけない。要はオプション込みの値段ね。そうなると300万円ちょいくらいになる。でも、世間の人は「サンデロが300万円もするの!?」って思っちゃう。だからここに関しては失敗したなぁって。

M/逆にすればよかった?

S/うん、普通のサンデロであの当時、245万円くらいでやろうとしてた。左MT5枚ドアのハッチバックが245万円なら割といいじゃんって。で、実際に見てみて、あまりにも普通過ぎたら、ステップウェイという手もあった。それだと275万円くらいだよ。あれこれ付けると300万円だけどね。だから次は普通のサンデロにしようと思ってたら、円安……。

M/ああ……、そっか。

S/いまだとステップウェイの値段でも普通のサンデロ買えないよ。

M/コロナに円安に。

S/とは言いつつ、いま新車で興味あるのはサンデロとトゥインゴくらいだしね……。

M/コロナはまぁ続くとしても、円安は想定外でした。

S/135円切ったら考えようと思うんだけどね。来年前半の課題はサンデロ買う資金を調達することかな。

 

トゥインゴ3 1.0左MT、色はお好みで。
キャンバストップ、アルミホイール、フォグ付き、
誰か買わない?

M/トゥインゴのほうはどうです?

S/トゥインゴはガス検がほとんどないんだよね。だからどうしようかと。僕の中ではTCe90、TCe110に未練がある。じゃあ、そのために追加でガス検取って中古車やるのかと言ったら、それはない。だからいま残ってる数台で終わりかなぁ。初期型が1台、中期が数台だけど、確保できる可能性は限りなく低い。

M/そっかぁ。

S/あとNAはまだ新車で手に入るから、それはやっときたいなぁって思う。だからトゥインゴ3 1.0左MT、色はお好みで、キャンバストップ、アルミホイール、フォグ付き。これって役満じゃん。誰か買わない? ユーロ落ち着いたら。

M/その仕様、いいですね。

S/でも、日本でのトゥインゴの価格設定って異様に安いんで、並行で取ると250万くらいになっちゃうから、価格のメリットはないんだよね。

 

「ああ、あのとき買っておけばよかった」と
後悔しないうちに。

S/いま欲しいクルマがないからって10年、15年前のクルマを乗ろうとすると、部品供給が危うくなってるからなかなか勇気がいる。だとしたら、いま新車買って後10年安心して乗れるほうを選んだほうがいいような気がするんだよ。

M/そうですね。圧倒的に正論です。

S/なので、トゥインゴとかサンデロとか、それ以外でもいいけど、なんか欲しい新車があったらお早めにどうぞ。だんだんBEVに浸食されて「ああ、あのとき買っておけばよかった」と後悔しないうちに。

M/ということで、2022年もお付き合いいただきありがとうございました。来年も引き続き、よろしくお願いします。

 

TEXT/Morita Eiichi

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