【CROSS TALK】ダシア・ドッケールの中古車ってどうですか?

今回は2019年に販売したドッケール(アンビアンス)が戻ってきたので、ある程度距離を重ねたドッケールが新車とどう違うのか。そしていまの時代にあえてダシアを、ドッケールを選ぶ価値とは何か、を走りながら考えていこうと思います。愛知県あま市から下道で津島市にある「ラーメンショップ(ラーショ)津島店」でランチ。その後、高速道路に乗って再びあま市まで戻ってくるルート。中古車、ドッケール、どんな感じでしょ?

Morita(以下、M)/2019年3月に初めてドッケールを取材させてもらって、それがオーナーの元に行ってから、返ってきましたね。約4年ぶりですか。このドッケールは何キロ乗ってるんでしたっけ?

Suzuki(以下、S)/42,000kmかな

M/当たり前ですが、新車のときよりも乗り味の角が取れて、マイルドになっていますね。

S/そうね。

M/だいぶこなれた感が。でも、まだ新車っぽさも残ってる。

S/まぁ、まだ40,000kmくらいだもんね。

 

(愛知県あま市を出発)


そもそも、なんでダシアなの? なんでドッケールなの?

M/まずドッケールというか、ダシアのおさらいでもしますか。ルーマニアのカーメーカーで、1966年に国営自動車メーカーとしてスタートし、ルノー車のノックダウン生産をしていた、と。で、1999年にルノーに買収されることになって、2004年に「ロガン」をデビューさせる。奇しくも「ヴィブルミノリテ」の第一回で取り上げたクルマですよね。で、ここからが本題なんですが、そもそも何でスズキさんがダシアを、そしてドッケールをやろうと思ったのか?

S/ああ、そういうことね。うーん、なんでだろうね。単純に言えば「キワもの好き」なのかもしれない。そもそも好きなんだよね、こういう大衆実用車が。ルノー好きなのもあるし。

M/まぁ、ルノーの基本的には大衆実用車メーカーですもんね。

S/そうそう。変にケバケバしいクルマとか、目立つクルマはない。すごく真面目にクルマづくりしてる。そういうメーカーがルーマニアのダシアを買収してこういうクルマをつくってるのって、なんかおもしろいじゃんって。

M/なるほど。ルノー好きからすれば、ダシアに興味を持つのも、当然の流れかもしれませんね。

S/クルマを売るという商売で考えたら、誰も知らないようなメーカーのクルマを売るってのは売りにくいと思う。買う側も敬遠するだろうし、売る側も。そりゃ知名度があって、ブランド力があって、ステータス性があるクルマのほうが売りやすいよね。努力しなくても売れてくから。でも、うちのお客さんはそういうどこにでもあるものには興味なくて、努力してでも手に入れたいってクルマに惹かれる性分なので(笑)。だから、そういうお客さんに刺さればいいし、刺さらなくても売れなきゃ自分が乗ればいいやって、そんな覚悟でいる。最初にやったロガンもそうだし、このドッケールもそう。

M/ははは! 良くないけど。

S/でも、時代が変わって、エントリーモデルのトゥインゴすら高くて買えなくなっちゃったいまを考えると、日本人がダシアの想定顧客になってしまってるんじゃないかと。

M/たしかにねー。日本は弱くなっちゃいましたもんね。

S/ただ、これまで3車種しかやってないけど、安いからと言って裏切られたことはない。クルマとしてちゃんとしてるし。

 

(ラーメンショップ津島店に向けて下道を走行中)

ダシアはToo Muchな現代車に対するアンチテーゼか?

M/僕はいまの時代だからこそ、ダシアのコンセプトが僕らのような世代のクルマ好きに合致すると思ってるんですよ。最近、ダシア関係の記事をよく目にするようになって、CEOからのメッセージも読んだりするんだけど「すべての消費者が価格が高くなってもいいから、いっそうの馬力、電子装備、快適性を求めているわけではない」とか「私たちが必須ではない装備を除外することで、車重を軽くしている。軽くすれば、モーターを小型にでき、コスト競争力が高まる」とか。これって僕らが「いやいや、そんな装備いらないよ。もっとシンプルでいいよ」っていう現代のクルマに対するToo Muchな感覚と似てるんですよね。

S/うんうん。

M/僕らが必要のないものと思っているものをクルマに付けて、重量増やして、価格を上げて、故障したりぶつけたりしたら高額の修理代が必要になって……て感じの方向に行ってることへのアンチテーゼというか。

S/実際にそういう路線で結果を出してるし。サンデロなんて、2022年の欧州でプジョー208に次ぐ2位の販売台数だからね。まぁ、多くは価格で買ってると思うけど。

M/中には僕らみたいな価値観の人も買ってるかもしれない。

S/そうだね。ヨーロッパでダシアの広報担当がディーラーやメディアに対して話してる内容を見ると「ああ、フランス人だな」って思う。その人がフランス人かどうかは分かんないけど、とことん合理的な考え方。これ、いらんよねってものに対して、なんで努力するの? って。「私たちはいらないと考える!」って言い切るところがすごい。

M/そうなんですよ。僕もそういうところに心揺さぶられましたね。

S/とは言っても、サンデロはまたちょっと趣が変わってきたけど、ドッケールはね。僕、よく言うけど、これって装備とか機能的にはカングー1だよねって。でも、カングー1で何も困ってなかったから、これでいいよねって。そういう潔さがたまらんね。

M/どんどんクルマが僕らの欲しいものとは違う方向に進んでいって「いやいや、そんなのいらないんですけど」ってものまで勝手に付けて、それで勝手に値段上げて。そういうところにダシアが出てきたので、僕はその考え方にすごく共感したんです。

S/このアンビアンスは当時、新車で200万円代前半で買えたんだよね。いまカングー400万円の時代。なんていい買い物をしたんだ、この6台のオーナーさんは! って思う。

M/ねー、もう手の届かないところへ行ってしまった……。

S/いまとなっては、新車つくってないから、欧州ではドッケールの中古が異常に高い。中古並行で持ってくるにも新車並みのお金出さないと買えないクルマになっちゃったしねぇ。だからって国内にいるクルマが安価いかといえば、そんなわけもなく。あえて新車に臨んだ前オーナーさんへの敬意はお金で表していただかないと(笑)。

M/確かに。

S/新しいカングーは装備・機能も充実していてすごいなぁとは思うけど、遠い目をしてしまう。僕が店やりはじめた頃って、サラリーマンが買えるクルマってだいたい500万円が上限だったんだよね。カングーが400万円だとすると、もうすぐそこ。それなら僕はダシアでいいかなーってなる。

M/そうですよねぇ。

S/世間一般の多くの人はクルマを選ぶときって、バッジを買ってるようなものだと思っていて。

M/まぁ、ブランドですよね。

S/その点においてはダシアなんて何の訴求効果もない。正規輸入されてないから買わない、とか、そう言われて候補から外される筆頭のクルマ。でも、ダシアの本質を見極めている人は買うだろうしね。FTP(フレンチトーストピクニック)のときだっけなぁ。「何でわざわざダシア?」って聞かれたんだよね(笑)。

M/ははは、でも、多くの人はそういう捉え方なんでしょうね。

 

ドッケールは壊れますか?

M/ドッケールですが、新車から販売して約4年経ちますけど、その間、故障とかはどうだったんですか?

S/細かいところはあったよ。パワーウィンドウを動かすとドアの中の配線が窓に当たっちゃったり、あとO2センサーが壊れたこともあった。だけど、それくらいで耐久性、信頼性は高い。最初に売ったロガンなんて14年経ってるけど、致命的な故障はないからね。

M/壊れたとしても、パーツの供給はほぼルノーと同じルートで行けるから、パーツがないとか、来ないとか、そういうこともないんですよね。

S/このクルマ、じつは2回ぶつけられてて。軽微だけどね。右フロントフェンダーを換えたときも、ちゃんと来たしね。さすがに3、4日では来ないけど、直せるし、構造的にシンプルなので「わー、これどうなってるんだろ?」って分かんなくなることもない。

M/普通に維持していけるんですね。

S/スタッドレス履きたいからってホイールのサイズ調べても、なんだ、ルノーと一緒じゃんって。社外ホイールで装着できるタイプもいろいろあるしね。16インチはちょっと少ないけど、15ならめちゃある。

M/いいですね。

S/いまドッケール乗ってるお客さんに社外ホイール頼まれてるんだけど、ちょっと楽しみなんだよね。ただ、ゼロからやならきゃいかんけどね。「みんなやってるから僕もやる」っていう考え方の人には向いてないね。

M/大丈夫。そういう人はそもそもダシアを選ばない(笑)。

S/あ、そうか。

 

アイドリングストップの躾が絶妙!

M/いま下道ですけど、あらためて乗ってみて街中での感触はどうです?

S/うーん……。そうだねぇ……。普通?(笑)

M/そうですよね。愚問でした。

S/だってさ、商用車だよ? 荷物車だよ? そこに多くを求めるの? って感じかな。ただ、その「普通」はいつもルノーに触れてる人のレベルだから、感覚はかなり上だと思う。安くつくったから手を抜いてる感じはないね。

M/なるほど。

S/たぶん向こうの高速道路では、日本でいうプロボックスみたいに「はえーなー」って思われてるんじゃない?

M/ははは、たしかに。

S/あとね、アイドリングストップの躾がすごくいいね。

M/ほうほう。

S/ちゃんと動こうと思ったときに、エンジンがかかっていてくれる。

M/すごく微妙なチューニングなんでしょうね。

S/そう。クラッチ踏んで何秒後には動きだすから、それまでに始動が完了してなきゃいけない。そのタイミングが絶妙。

M/だからアイドリングストップが付いていても、ぜんぜんストレスに感じない。

S/だね。まぁ、いまどきのルノー車に乗っても同じようにストレスに感じないから、一緒なんだろうけどね。

M/耐久性や信頼性など、ルノーで実証されたパーツを使ってるだろうから。

S/まさに“出がらしの技術・製品”だね。

M/出がらしっていうと聞こえは悪いけど、要は熟成されてるってことですからね。

S/大衆実用車として、いいクルマだと思うよ。

 

(ラーメンショップ津島店に到着し、ラーメンを食べる)

ダシアはラーメンショップ!?

M/ラーショは写真撮影NGでしたね。思わず撮るところでした。

S/だね。まぁ、何となく思うのは、ダシアはラーショとかラーメン福とか、そういう存在だね。余計なことしない(笑)。

M/ああ、それは言えてる(笑)。ラーメン業界の最先端を追わない(笑)。これでいいよね、を貫き通す!

S/そうそう。

M/じゃあ、ここから高速乗りますか。

 

(東名阪自動車道「蟹江IC」から名古屋西JCT方面へ)

高速道路でのドッケールは?

M/僕、カングーなら断然カングー1で、中でもフェーズ1の1.4が好きで。商用車なんだけど、スタビリティの面では他のカングーよりも高いし、乗り味がいちばんルノーっぽい気がするんですよね。

S/1.6はパワーとトルクがあるので楽なんだけど、1.4のほうが全体的にちょうどいい感じがするね。

M/そうなんですよ。バランスがいいからまとまってる感じがするんですよね。デザインもいいし。

S/やっぱルケマンかなぁ。

 

(名古屋西JCTから名古屋高速へ)

M/きょうは風が強いですけど、横風の影響とかどうですか?

S/僕は普段、1.4のカングー乗ってるから、こんなもんかなぁ。特に何も感じないけどね。

M/あ、そっか。

S/追い抜きのときに、アクセル踏んですぐトルクが立ち上がるのは、1.6カングーとかドッケールに分があるかなぁ。当時、ドッケールには1.2ターボもあったんだけど、ちょっとアンダーパワーじゃないかなって思ったんだよ。それで1.6のほうにしたんだよね。税金高いけど。

M/そっか。1.2ターボはトゥインゴ2のGTと一緒のエンジンですかね。

S/で、1.6を注文して日本に来て初めて知ったのが「日産のエンジンだった」という事実……。ちょうどルノーから日産に切り替わる時期だったみたいで。まぁ、結果良かったけどね。

M/なんでです?

S/ルノーエンジン積んでるドッケールが来たら、それでガス検取るよね。でも、日産エンジンに切り替わると、もう一回ガス検取らないといかん。

M/ああ、そっか!

S/ドッケールを試乗した雑誌社の人とか、ちょっとトルク細いかなぁって言うんだけど、僕は日常で1.4に乗ってるから「え、充分じゃん」って思っちゃう。

 

(名古屋高速「高針JCT」から名二環の楠JCT方面へ)

M/3000rpmくらいの回転フィーリングがいちばん気持ちいいですね。

S/100、110km/hあたりね。これ、もともと15インチなんだけど、それにスタッドレス履かせてて。いま履いてる16インチはステップウェイ用のスチールホイールなんだよ。

M/そうなんですね。どっちかと言えば15インチで充分かも。

S/ああ、ドッケールで唯一の不満、あった。ギア比が低いこと。

M/そうですね。たしかに。僕は日常でギア比の低いクルマに乗ってるからあんまり気にならないけど、確かにギアのステップ比、ファイナルともに低めですよね。

S/5速、3000rpmで100km/h。飛ばす人はそれ以上の回転数になるわけだから、うるさいよね。街中でちょこまか走るのはいいけど、高速で長距離はちょっと辛いかも。

M/街中を走ったり、荷物を満載したときのことを重視してるからでしょうかね。

S/ビバップもそうだよね。あれもギア比低い。

M/あんなにギア比低くすることないのにって思うけど、あれも結局ベースが商用車ですもんね。

S/そう考えると、クーボのほうがいいね。

M/ああ、そうそう。クーボはけっこうワイドですもんね。高速でめちゃ楽だった。

S/だよね。あれは高速かっ飛ばすのに最適。まぁ、でもそれは飛ばす人限定。ドッケールは90、100km/hの巡航が最適ってことは、ある意味、日本の道路法規に合ってる。

M/たしかに。免許にはやさしいかも。ああ、でもやっぱり新車のときよりも乗心地がいいよなぁ。

S/角が取れた感じはする。ヒョコヒョコした感じも少ないし。

M/そうですね。新車のときはそういう落ち着きのなさを感じました。

S/タイヤも影響があるかもしれない。もう1台、中古のドッケールがあるんだけど、それは25,000kmくらい。それは新車時の15インチに某韓国メーカーのタイヤ履いてたんだけどね。新車の時はあんがい良かったんだけど、減ってくるとひどい。タイヤが原因かどうかは新品を履いたときにわかる。おすすめはインドネシアの「GT-Radial」。けっこういいのよ、昔のミシュランの普通のタイヤみたいで。

M/タイヤはけっこう大きいですからね。空気圧でもけっこう変わるし。というか、中古のドッケールが2台あるって(笑)。

S/それが弊店(笑)。あとオートワイパーも付いてないけど、間欠があるから別に困ることないし、電動ドアミラーが付いていれば、ちょっとは便利かな。

M/まぁ、でもミラーの角度って一回決めたらそんなに変えないですよね。たとえば奥さんと共用してて、シートポジションが旦那さんとかなり違うとか、そういうときは別でしょうけど。

S/あとは、長さが気になる人、いるかもね。カングー1のフェーズ2より約32cm、カングー2と比べても約8cm長い。

M/荷室の広さとトレードオフですからね。コンパクトさを重視するか、荷室容量を重視するか、で変わってきそうです。

 

(名二環「清州西IC」を下車)

S/さ、そろそろ降りますよ。

M/清州西ICです。きょうは下道と高速、両方乗ったわけですが。

S/そうだね。新車から約40,000kmで特に大きな故障もなく、普通の大衆実用車を普通に乗りたい人にはいいよね。

M/特にカングー1からの乗り換え組におススメしたいです。いまのカングーはちょっとな、と思っている人にとっては、カングー1のテイストを手に入れられるわけですから。あと、最近はアウトドアブームで車中泊とか流行ってるんで、キャンパーに仕立てるベース車としても最適だと思う。余計なものが付いてないから、カスタムしやすいはずですよ。

 

TEXT & PHOTO/Morita Eiichi

 

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