RENAULT MEGANE 1-2

メガーヌ2イメージ3212先月のカングーに続いて実に運がいい。今回はボディ形状こそ違えど、メガーヌ1とメガーヌ2の両方を試乗する機会に恵まれた。デザイナーとしてフォードに、コーポレートデザイン統括としてVWで活躍したパトリック・ルケマンの代表作と言ってもいいメガーヌ。その2台のインプレッションをお届けしよう。

 

 

メガーヌ1-前7-33125メガーヌ・クーペは「GT」です。

初代メガーヌは、19(ディズヌフ)の後継として、1995年のフランクフルト・ショーでデビュー。19の保守的なデザインから一転し、アグレッシブな顔つきになって登場した。さまざまなボディタイプを持つメガーヌのなかで主力は5ドアハッチバックとクーペで、今回試乗したのはクーペだ。基本的なメカニズムは19のキャリーオーバーだが、クーペには元々クリオ・ウィリアムズ用に開発され、スポール・スパイダーにも搭載されている2リッターDOHC16バルブメガーヌ1-後7-33124が搭載されている。ただ、スパイダーとは排気系やECUの違いでパワーは同一でありながら、トルクは若干低められているデチューン版だ。いや、デチューンというよりも、より実用性を高めたセッティングになっているといったほうが正しいかもしれない。
インテリアは外観同様にオーバルを意識したデザイン。多少ゴチャゴチャした印象はあるが、これも個性のひとつだと割り切れる範囲内だと思う。シートはさすがルノー! スポーティーなバケットタメガーヌ1-エンジン3126イプでたっぷりとした厚みのあるクッションはフィット感も上々。ただ座るだけで「これは長距離でも疲れないだろうな」と想像できる。
エンジンに火を入れて出発。借り出す前にすずきさんが「80km/h以下は普通だよ」と言ってたのを思い出し、ちょっと足を伸ばすために高速道路に乗ることにした。
インターまでの一般道ではたしかに特筆すべき点はないように思える。少し固められた脚と195/50R16のタイヤと相まって、ルノメガーヌ1-トランク3127ーらしいしなやかな足回りをもってしても低速ではゴツゴツ感が否めない。しかし、ひとたびゲートをくぐり、アクセルを踏み込んでみると、スムーズなトルクカーブに乗ってどこまでも加速していく。これがじつに気持ちがいい。メーターを見ると「え、もうこんなに出てるの!?」と、思わずアクセルを緩める始末。それからは100km/h前後でクルージングしたのだが、一般道で感じたゴツゴツ感はまったくなくなり、今度はフラットな感覚が押し寄せてくる。とにかく安定しているのだ。レーンチェンジもさほどロールせずにスッと向きを変えるし、道路の継ぎ目を乗り越えるショックは不快どころメガーヌ1-インパネ3129か、むしろ積極的に踏んでいきたくなるほど振動が心地よい。低速域と高速域でこれほど印象の変わるクルマはあまりお目にかかったことがない。とにかくスタビリティの塊のようなクルマ。すずきさんの言うように、たしかにこれは一般道をゆっくり走っていては気づけまい。
ロケ地に着いて撮影する前にちょっとしたコーナーのある道を走ってみた。しっかりと走りこんだわけじゃないのではっきりとは言えないが、ハンドリングも良い印象を持った。というも、ホイールベースに対してトレッドが広めなので、少しの切り角で鼻先がスッとイメガーヌ1-前席3130ンに向いてくれるのだ。低速のタイトコーナーよりも中速以上のコーナーのほうがより分かりやすい。オンザレールの感覚はまさにこのことを言うのだろう。エンジンもどちらかというとトルク重視型なので、高回転まで引っ張らなくてもアクセルを踏み込めばすぐにトルクが立ち上がってくるのも魅力だ。この性格からF2キットカーとしてラリーで活躍したのもうなづける。
いまとなってはコンパクトクーペと呼べるクルマはそうそうない。個性的で肉食系の顔(もちろん後ろも)を持ちながら、サイドからは流れるようなルーフラインと伸びやかなショルダーラインが印象的なメガーヌ1。高速移動6割、ワインディング4割くらいの使い方をする人にぜひ乗ってほしいクルマだ。

メガーヌ1-後席3131メガーヌ2はさらに「GT」です。

さて、お次はメガーヌ2。「退屈へのレジスタンス」という挑戦的なキャッチコピーを引っさげて、本国では2002年末から発売を開始。その外観からキャッチコピーの示す意味が伝わってくる。ヴェルサティス、アヴァンタイムの流れを汲むスタイリングは、とくにリアビューに集中。垂直に切り立ったCピラーはかなり個性的だ。5ドアハッチバックではそうでもないが、3ドア(スポーツハッチ)はリアクォーターガラスのラインとルーフラインがまったく別のラメガーヌ1-オートガラス3134インを描いており、これまで一般的だったリア周りのデザインに“反抗”している。ヨーロッパではこの個性が受け入れられたようだが、デザインに対して保守的な日本では、どうもこのデザインがネックになったようだ。個人的には常識と非常識をよくもまぁ、1台のクルマのなかで共存させたな、と感心するばかりなのだが……。
車格はメガーヌ1のBセグメントからCセグメントにアップし、VWゴルフやアウディA3、プジョー307あたりと競合する。メガーヌ2のCメガーヌ2前7-33210プラットフォームは日産でいえばブルーバードやパルサーと共有しており、デビュー時には3ドア、5ドア、セダン、ブレーク、カブリオレ、モノスペース、フルゴネットの合計7つのボディを架装すると言われていた(フルゴネットは確認できていないが)。エンジンのラインナップは、ガソリンが「1.4(98ps)」「1.6(115ps)」「2(136ps)」の各DOHC16V、ディーゼルがいずれもターボの「1.5dCi(80ps)」「1.9dCi(120ps)」の計5種が用意され、ギアボックスは5MTをメインに、2リッターガソリンと1.9dCiには日産製の6MTが組み合わされる。当該車種は5ドアハッチバックに2リッメガーヌ2後7-33209ターDOHC16バルブの左ハンドル6MTモデル(新車並行)だ。
カードキーによるハンズフリーシステムなので、中に入るのにカギはいらない。ドアノブを引いてロックを解除し、シートに座る。インテリアは外観の革新さに対し、すっきりした印象でそれほど“反抗心”を感じないし、シートもメガーヌ1ほどボリュームを感じない(それでも充分満足できるレベルなのだが)。クラッチ(もしくはブレーキ)を踏み込んで、スターターボタンを押しエンジン始動。ハンドルを切って発進すると電動パワステになっていることに気づく。メガメガーヌ2エンジン3214ーヌ1と同じようにコイツも高速道路に持ち込んでみよう。
乗り始めてすぐに分かるのが、二重フロア採用によるボディ剛性の高さとサイズアップによってスタビリティがさらに増したこと。足回りはメガーヌ・クーペよりもワンランク上のルノーらしさを提供し、エンジンの静粛性が上がったことで、より速度感が失われている。これもしっかりとしたボディがあるからこそ、しなやかなセッティングの足回りが存分に活かされているのだと思う。それにしてもフロント/ストラット、リア/トレーリングアームという極普通の構造メガーヌ2ラゲッジ3218で、ここまでまろやかな感触を与えてくれるのだから、本当に恐れ入る。いつもは高級の「こ」の字も感じないクルマに乗っている筆者にとって、その乗り心地は充分に「高級」を感じさせてくれるのだった。
走りの面では若干パワーダウンしたエンジンと200kgほどアップした車重によってメガーヌ・クーペほど軽快感はない。メガーヌ・クーペのようにどの回転域からでも踏めばすぐにトルクが盛り上がってくる印象も薄く、ダイレクトに「速さ」は感じない。しかし、先述したようにいつの間にかメーターの針がよからぬ数字を指してしまうのは、エンジンの出力だけではない、クルマ全体の総合力によるものだろう。メガーヌ2はただ速いだけでなく「楽に速く走れるクルマ」と表現したい。

メガーヌ2インパネ3217日本ではオーバースペック!?

新旧のメガーヌを乗り比べてみて感じたのは、他の多くの車種がそうであるように、モデルチェンジをするたびに車格が大きくなり、コンフォート路線へシフトしていく潮流は同じだ。しかし、ルノーらしい乗り味は正常に継承され、その高速性能も飛躍的にバージョンアップしている点は、デカくなってデメリットばかり目立つクルマが多い中ですばらしいと思う。ただ惜しむらくは、その性能を狭い日本ではなかなか発揮できないことだろう。高速域になればメガーヌ2前席3215なるほど、その良さが実感できるものの、それを試す機会が少ないのはあまりにも残念だ。「日本ではその長所が仇になりました」なんて、ルケマンさんに申し訳なくて言い出せない。デザインはメガーヌ1も2も個性的だから、当然好き嫌いが出てしまうのは仕方ないのだが、動力性能に関してはたった2リッターのエンジンでここまで作りこんであるクルマは稀有だ、と言い切ってもいい。メガーヌを一般道でしか運転したことのない人すべてに「高速道路で乗ってみてよ」と触れメガーヌ2後席3216回りたい。でもなぁ、日本ではやっぱり無理があるのかなぁ。

TEXT & PHOTO/Motrita Eiichi

‘99 RENAULT Megane Coupe 2.0 16V
全長×全幅×全高/3930mm×1720mm×1370mm
ホイールベース/2470mm
車両重量/1120kg
最大出力/110kW(150PS)/6000rpm
サイドブレーキ3220最大トルク/181.4Nm(18.5kgm)/4500rpm

関連URL/http://www.reno-auto.net/wp/archives/2923

’03 RENAULT Megane2 2.0 16V Privilege Luxe
全長×全幅×全高/4215mm×1775mm×1460mm
ホイールベース/2625mm
車両重量/1310kg
メガーヌ2カードキー3219最大出力/98kW(133PS)/5500rpm
最大トルク/191Nm(19.5kgm)/3750rpm

関連URL/http://www.reno-auto.net/wp/archives/1201

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3 Responses to “RENAULT MEGANE 1-2”

  1. 若翁 より:

    思わず膝を打ちたくなるレビューです。
    メガーヌ II MF4Mのオーナーです(2013年4月から)。

    実は2013年3月に拝見しておりましたが、”みんカラ” デビューを機にコメントを入れさせていただきました。

    • ありがとうございますー。

    • morita より:

      コメントありがとうございます。
      オーナーさまからのお褒めの言葉、うれしいです。
      メガーヌはあまり登場しませんが(汗)、今後ともよろしくお願いします!

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