東京モーターショーの(偏った)楽しみ方2013

全景1602今年もやってきました。2年に1度の「東京モーターショー2013」。会期は11/23(土)~12/1(日)で、まさに現在絶賛開催中なのであります。
前回は「祝! 東京モーターショー開幕 毎日1ネタずつ紹介します」として、合計10ネタをご紹介しました。で、今回は前回同様、プレスデーに行くことができたので、その内容を一部ご報告します。とはいっても、そこは「vive le minorite」。ほかのメディアと同じ視点で最先端のクルマばっかり紹介してもまったくおもしろくないので、非常に偏った視点でお送りしたいと思います。つまらない人には徹底的につまらない。でも、ハマる人にはとことんハマる、そんな内容でお送りしたいと思います。

TONE工具1607ピッカピカのテッカテカ TONE

皆さん、工具好きですか? きっとここを見ている方の多くが「好き!」と答えてくれるでしょう。世界にはいろんなメーカーがありますね。ファコム、ベータ、ウザック、マックツールズ、ハゼット、スナップオン、スタンレー、シグネット、クニペックス、プロクソン、PB……。国産ならKTC、旭金属工業、ベッセル……そして忘れちゃいけないのが「TONE」。トーンじゃないですよ。「トネ」です。大阪府に本社を置く工具メーカーなのに、なぜか「TONE」は「利根川から命名」というよくわからん理由。もともと「前田金属工業」という名前でさまざまな工具を扱っていました。日本ではじめてソケットレンチをつくったメーカーとしても有名です。
さて、このTONEがブースを出しておりました。いろんな工具が並んでいましたが、なかでも目を引いたのが「SUSツールシリーズ」。名前のとおりステンレスを素材にした工具なのですが、まぁ、その美しいこと。ピッカピカのテッカテカ。もちろん意味もなく意匠性を求めたわけではありません。船舶、マリンスポーツなどの海洋関係の使用で工具が錆びるのを防いだり、食品、医療、精密機器などを扱うところでは、めっき剥離片を嫌うことも多いです。また樹脂グリップでは薬品によって腐食しちゃう可能性だってある。まぁ、そんなニーズによって誕生したシリーズなのです。これ、ステンレスの塊だと思って持つと拍子抜けするほど軽いんです。特にドライバー。聞くとグリップの部分、中空になってるんですって! 中をくりぬいてからシャフトの部分を溶接しているという手間のかけよう。これは所有欲をくすぐられる製品ですね。

TONE株式会社
http://www.tonetool.co.jp/
(フェイスブックのページもあるので探してみてください)
ラディカル1611「立ちゴケしないオートバイ」 RADICAL STO

イギリス・ラディカルモータースポーツ社の日本総代理店が「RADICAL STO」。ブースに1台だけ展示してあったのが「SR3 SL」でした。公道走行可能でありながら、ほぼレーシングカーといっていいクルマです。エンジンは2.0リッター・フォード製エコブーストをベースにし、ターボの過給もあいまって240ps・34.7kgmを発揮。6速シーケンシャルドグミッションをオートブリッパー付パドルシフトで操ります。もちろんLSDも付いてます。車両重量は795kg。価格も1265万円(税別)とかなり速い! ほかにもスズキの2輪車「ハヤブサ」のエンジンを積んだモデルや、そのハヤブサのエンジンを2個くっつけてV8にしちゃったモデル(ともにサーキット専用)もあります。さすがイギリス!

Radical STO
http://www.sto-radical.com/
ミクニフライバイワイヤ1614ライドバイワイヤでもリニアだよ MIKUNI

おっさん世代は「キャブレターのミクニ」ですが、時代とともにキャブはなくなりつつありますね。4輪用としては、電子制御スロットルボディーやアイドルコントロールバルブ、可変バルブタイミングシステムなんかもつくってたりします。2輪はキャブもありますが、やはり多くが電子制御品。写真は大型2輪用の電子制御スロットルボディーです(MVアグスタF4 RRに使用)。アクセルによる開閉を電子制御で行ういわゆる「ライドバイワイヤ(フライバイワイヤ)」なのですが、デモとしてアクセルが置いてありました。試しに捻ってみると、そのリニアなこと! 4輪ではレスポンスが悪くなったとか、回転の落ちが悪いとかいろいろ悪評を聞きますミクニTMR1616が、バイクに関してはそうじゃないみたいですね。実際にライドバイワイヤのバイクにも乗ったことがありますが、言われなければ普通のワイヤー引きと違いが分からないくらい鋭いレスポンスを伝えてくれます。あ、ちゃんとキャブ(TMR)も展示されてましたよ。ピカピカメッキは専用品らしいです。やっぱおっさんにはこの造形がしっくりきますね。

株式会社ミクニ
http://www.mikuni.co.jp/
イワタボルトUPS1619感動の知恵と技術力 イワタボルト

ネジの話です。図がないので非常に分かりにくい説明になるかと思いますが、ご勘弁を。感動したのは「緩み止めナット」です。緩み止めナットと聞いて、どんなものを想像するでしょうか?
ナット山頂部にナイロンが付いているもの? それともメタルリングのカシメが付いているもの? どちらもクルマいじりをする人にはなじみのあるものだと思います。しかし、これだとナイロンやメタルリングを取り付けるために工数が増え、コストが上がってしまいます。そこでイワタボルトが考えたのが、ネジ山の角度をわずかに変形させることで、弾性変形(物体が元に戻るときの変形)を利用して強く接し、ゆるみを防止しようというもの。さらにピッチ誤差が集積することで、ネジ山を強くロックし、脱落防止にも役立ちます。これ、すごい発想じゃないですか? たかがネジ、されどネジ。こんな小さな部品にも、人の知恵とそれを実現する技術力が詰まっているんですね。

イワタボルト株式会社
http://www.iwatabolt.co.jp
ルノーSRT1630電気自動車による新しいレースカテゴリー Spark-Renault SRT_01E

「フォーミュラE」ってご存知ですか? 2012年に国際自動車連盟(FIA)が設立した電気自動車による新しいカテゴリーです。開催は来年2014年からなんですが、初年度は専用マシンを用いたワンメイクレースになるんです。で、その専用マシンがこれ。この「スパークルノーSRT_01E」は、昨年のフランクフルトショーでデビューしたのですが、展示車両はおそらく同じものでしょう。最高出力は200kWで馬力換算すると270psくらい出てるらしいです。レーシングカーと言えば爆音とともにストレートを走り去る光景が当たり前でしたが、エンジン音もなく静かにストレートを通過していく感覚はどうなんでしょうか? 来年9月から中国GPを皮切りに全10戦が予定されています。

 

TPRシリンダーライナー1632あの部品の外側は? TPR

TPR(前社名・帝国ピストンリング株式会社)は自動車関連のパワートレイン、内装、外装部品、足回り部品などをつくっているメーカーです。なかでも感動したのがシリンダライナーです。シリンダを構成するためにエンジンブロックにはめ込まれる金属の筒なんですが、これの外側って見たことあります? ないですよね。だって、たいていはエンジンブロックにはまった状態なので、内側は見ることはあっても、外側は物理的に見ることができない。で、TPRのつくるシリンダライナーの外側はこうなっているんです(写真)。
なんですか、このボツボツは!? これ、特殊鋳肌と呼ばれていて、こうすることによって異材(この場合、エTPRシリンダーライナー表面アンジンブロックですね)との高い接合性と熱伝導性を確保しているんです。いやぁ、まさかこんなんになってたとは思いもよらなかったです。もちろん、この技術はTPR独自のものなので、他社製品はまた違うと思いますけどね。

TPR株式会社
http://www.tpr.co.jp

 

レンズリフォーマー1636その黄変、何とかして! アロークラブ

おなじみ、ヘッドライトの黄変です(正確にはヘッドライトカバーの黄変)。ヘッドライトってのはアピアランスに大きな影響がありまして、ここが汚れているとクルマ全体が古臭く、ボロっちく見えてしまうんですね。最近のクルマは異形のヘッドライトが増えてきて、ヘッドライトカバーがポリカーボネイトでつくられるようになりました。樹脂なのに非常に強度のあり、透明度も高い素材なので、ヘッドライトカバーにはもってこいなんですが、紫外線を吸収して化学変化を起し、表面が黄変・白化するという弱点を持っています。しかも最近のクルマはHIDやキセノンと呼ばれるディスチャージタイプのヘッドライトが増えてきています。これ、アーク放電の原理で大量の紫外線を発します。屋根付きガレージで外部からの紫外線をカットできたとしても、ヘッドライトを点けると内側から紫外線ブシャー! なのであります。
いまのところ根本的な解決にはいたってないようです(ただ、モノによってはポリカなのにまったく黄変しないものもあるから不思議)。研磨して、コーティング剤で保護するというのが一般的な対策のようですが、コーティング自体も経年劣化するので半永久的に黄変とはおさらば! というわけにはいかないようです。展示されていた「レンズリフォーマー」は、日本で発売されているこの手の製品の中では唯一「ヘッドライトカバーの塗装専用」と謳っているものみたいです。その効果のほどはいかがなもんでしょうか?

アロークラブ
http://www.arrowclub.info

 

BNL1680ベアリングまでも樹脂化の時代 BNL

自動車業界の大きなトレンドとしてここ数年、金属から樹脂の置き換えが進んでいます。もちろんお題目は環境時代においての「軽量化による低燃費化・コスト削減」がねらい。これまでもボディ外板やギア、プーリー、最近ではオイルパンまでもが樹脂化されています。そしてついにはベアリングまでも樹脂化されるようになりました。もちろん強度が必要とされる部分には適さないかもしれませんが、金属ベアリングに比べて軽量化、デザイン性の自由化、スムーズな回転フィーリング、グリス不要、コスト低減など多くのメリットを持っています。大きな力を受けない場所に、今後はより多くのプラスチックベアリングが使われていくかもしれません。

BNLジャパン
http://www.bnl-bearings.com/japanese/about_j.html

 

ルノーブース1668ルノーキャプチャー5509ルノーブース1670シトロエンブース1676プジョーブース1677さて、さすがにこんなのばっかりで終わっちゃうのもアレなんで、カーメーカーもちょっと紹介しましょう。
まずルノー。ブース中央にはヴァンデンアッカーさんに変わってからの2発目(になるのかな?)コンセプトカー「デジール」が鎮座しておりました。電動モーターをミッド・リアに積んだ電気自動車です。左右、ヒンジが違うドアの開き方もおもしろいですね。2011年はコンセプトカー展示だった「キャプチャー(写真・右上のものは2011年出展時のもの)」もえらく現実的な形で展示されていました。
シトロエンの目新しいのは、今年のジュネーブショーで「テクノスペース」として紹介した7人乗りMPVの「グランドC4ピカソ」でしょうか。新型のプラットフォームに1.6リッターターボエンジンを載せたモデル。日本導入は来年の秋とか。
プジョーはこの「RCZ R」でしょうか。プジョースポールがチューンしたエンジンは1.6ターボで270psを発揮。左ハンドル・6MTのみの設定で540万円だそうです(来年春導入予定)。

☆おまけ
http://youtu.be/N2htMHln7YE
小糸製作所のブースにあった「RAYMOTION」。ハイビーム、ロービーム、方向指示器をまとめたヘッドライトコンポーネントなんですが、なかなかおもしろいです。光源はすべてLEDで、たとえば方向指示器のウェーブについては、こんなギミックを使う必要性はありません。でも、モノが実際に動いている様子を見るのってなんかいいんですよね。これをLEDだけでウェーブさせても何のおもしろみもない。このアクリルのブロックを光に合わせてカタカタ動かしているから楽しいのであって。技術が進んで何でもスマートに、いらないものは極力省くことができるようになるのかもしれないですが、このような人間の原感覚に訴える遊び心は失ってほしくないですね。

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