RENAULT Super 5 GTX Cabriolet

メイン_801きっと誰もが経験のあること。それは幼い頃の夏休みの宿題。休みに入る前は「毎日計画的に消化していこう」と誓い、やるべき課題のページ数を休みの日数で割って、1日の分量を決めたりするのだが、結局それはいつの間にかなし崩しになり、始業式前日に慌ててやるハメになる。ただ問題を解くだけのタイプならいいのだけど、自由研究や図画工作、毎日の天気など、さまざまなタイプの課題を一斉に取り組むとなると、どうしても無理が出てくる。そして「ああ、ちゃんとやっとけば……」と後悔するのだが、その後悔は1年も経つと忘れてしまうのもので。翌年もまた同じことを繰り返すことになったりする。今回はそんな夏休みの宿題と関係がありそうでなさそうだけど、やっぱりちょっと関係ありそうな話をしよう。

 

前_798 前(オープン)_799日本に1台!?

久々にレアモノの登場である。シュペールサンク(通称:横サンク/エンジンが横置きに搭載されているため、そう呼ばれている)のカブリオレ。サンクにカブリオレなんかあったんだ……? と思う方もいらっしゃるだろう。このクルマはベルギーのコーチビルダーである「EBS」がサンクを“カブリオレ化”し、トータルで1400台ほどつくったうちの1台。日本へは、当時のインポーターであるキャピタル企業とトーメンがサンク・カブリオレを正規輸入しようと考えていたらしく、サンプルとして数台が先行輸入。しかし、その後何らかの理由によって導入が中止に。日本にやってきたのは、結局この数台のみとなった。そしてそれらも時代とともに淘汰され、おそらくだが、現存している個体はこれ1台だけではないか、と言われている(調べようがないので何とも言えないけど)。日本にたった1台(かもしれない)の貴重なクルマ……というとプレミアム感が漂うが、実際は命からがら何とか生き残った1台……といったほうが意味合いとして正しいかもしれない。

 

後_797 後(オープン)_800神、降臨。

というのも、サンクはしょせん大衆車である。羨望の的になるような高級車でもなければ、限定生産のクラシックカーでもない。フランスを中心に庶民が乗り倒していた大衆車を改造して屋根開きにしただけのものだから、最初は物珍しさで買ったとしても、そんなに大事にされるもんでもない。ソフトトップは傷みやすいからといっても、屋根付きガレージで保管してもらえることもなかっただろう。そんな扱いが25年も続ければ、それはもう大変なことになる。この写真だけ見れば小ぎれいでかわいらしいオープンカーだねって話にもなるが、ここまでするのにどれだけの苦労と苦難があったことか(その顛末はこちらッ!)。私はきれいにしてもらう前の状態を見ているが、それはもうひどい状態だった。オープンカーのチャームポイントである幌は、チャームポイントであるがゆえにその程度が良くないと一気にウィークポイントへ成り下がる。純正幌はビニール製だったので色あせ、樹脂ウィンドウはくすみ、縮んで破れ、その箇所はガムテープで塞いであった。優雅なオープンカーとは程遠いコンディションだったため「このクルマ、このまま廃車になっちゃうのかな……」と寂しい気持ちになったのをいまでも覚えている(すずきさんも何度も捨てようかと思ったらしい)。

運転席_803しかし、そんなクルマを買ってくれるというオーナーさまが現れたおかげで、サンク・カブリオレは息を吹き返した。私はRENOさんの従業員ではないのだけど、このレアなクルマを救っていただいてありがとうございます! とお礼を言いたい気分である。おそらくオーナーさまもすずきさんも「このクルマをこのまま見殺しにはできない」という想いだけでここまで仕上げたのだろう。ファインダー越しにきれいにしてもらったサンク・カブリオレは、少し誇らしげに、これから迎えるオーナーさまとの時間を楽しみにしているかのように見えた。思わず「可愛がってもらうんだぞー!」とエールを送りたくなる。

 

リアシート_802ジェントルな乗り味。

さて、ちょっとセンチメンタルになってしまったが、横サンクは過去にGTターボに乗らせてもらっている。たかだか120psなのに、あの凶暴さ。13インチなのに195。ゆえの上腕強化重ステアリング。そして油断してると指を捻挫しちゃうほどの強烈なキックバック……。まさに個性の塊のようなクルマだったが、それに比べてサンク・カブリオレはいたってジェントルだ。

と、その前に横サンクの説明をざっとしよう。1972年にデビューした第一世代・通称:縦サンク(エンジンが縦置きに搭載されているため、そう呼ばれている)の二世代目として1984年に登場。デザインは縦サンクが社内のミシェル・ブエ氏が担当したのに対し、横サンクはマルチェロ・ガンディーニ氏がリデザインしている。

エンジンのラインナップは956cc、1108cc、1397cc、1397cc+ターボ、1721ccの5種類で、前期型(1984年~)がキャブ、後期型(1987年~)になってインジェクションを採用。豪華装備の「バカラ」をトップグレードに、本国ではキャンパス、TL、GTR、S.D、エクスクルーシブ、GTE……など、さまざまなグレード展開がなされている。

ラゲッジ_804そのなかでもGTXはもっとも排気量の大きいモデルに該当し、非常にトルクフル。実際に走らせるとスペック以上に速い。GTターボのようなドッカン加速ではなく、マイルドでやさしい加速だ。そのためガンガン回すのではなく、早め早めにシフトアップしてゆったり乗るほうが似合っている。トルクフルなので、飛ばしシフトをしても受け入れてくれるルーズさ。それがまたいいではないか。ステアリングもノンパワーでありながら、それほど負担は感じない。165/65R13というロースペックなタイヤサイズが、そのやさしさに貢献してくれていると思う。最初はさすがにちょっと気を遣うかな、と思ったが、乗り始めて数十分ですっかり体になじんでしまった。

幌を開けるためには、Aピラー上端のロックを左右1か所ずつ外し、後ろに持ち上げながら倒すだけ。やはり古いクルマのオープンカーは、Aピラーが寝ていないので圧迫感がなく爽快なオープンエアが楽しめる。私は冬、厚着してヒーターをガンガン効かせながら夜の街をゆっくり流すのが好きだ。今回も目的もないのに名古屋の街の夜を走って楽しんだ。ときどき路肩に止めては、ボディに反射する街の灯りの美しさに見とれた。日本に1台(と思われる)レアなクルマなのに、誰も振り向いてはくれないのだけど……。

 

エンジン_805クルマが葬られる理由。

走っていて思うのは、やはりこのクルマに命を吹き込んでくれたオーナーさまへの感謝と、すずきさんのご苦労だ。普通にアクセルを踏めば加速し、普通にブレーキを踏めば減速する。この当たり前に運転できることのすばらしさは、このような状態になる前を知っているからこそ、余計に沁みる。と、同時にここまでの大手術になる前に、何とかできなかったのか、という想いも湧いてくる。

当たり前のことだが、機械は壊れるものだ。クルマは機械なので、例外なく壊れる。ただ、定期的な点検などをすることで、壊れる前に対処することはできる。お金をかけることも愛情だが、それ以前に「目を配る」のが愛情だ。その両方がなくてはクルマを健康な状態には保てない。

タイヤ_806たとえば、何かトラブルが起きたとして、それが10万円くらいの修理費で直るものだったとする。そのクルマを維持していくつもりなら、安くはないけど何とかできそうな金額ではある。しかし、トラブルが同時に2か所以上起こった場合、その金額が20万円、30万円となったときにどうするか? 愛情とお金の天秤。好きではあるけど、その費用は出せない。もしくは、その費用を出して直すまでの価値が見いだせない。そういう結論に至ることも多いだろう。かくして(このような理由だけではないにしろ)クルマはこの世から葬り去られていくのだ。

 

キー_808夏休みの宿題は計画的に!

クルマを愛する者として、こういった末路は何としても避けたい。では、そのためには何をするべきか? 直さなければならないもの(=宿題)を後々まで引きずらせないことだ。

あまりにも当たり前の答えなのだが、チリも積もれば山となる。ま、これくらいの不具合はいいか……と悠長に構えていると、後々のっぴきならない事態に発展してしまう可能性がある。「トラブルはなるべく早く対処!」だ。もちろん、そのような心構えでいたとしても、同時多発的にトラブルが起きることもある。しかし、その可能性を少しでも減らしたいなら、目をかけ、手をかけ、である。あと「いつまでもあると思うなクルマと部品!」。このクルマを起こせたのは、本当にタイムリミットぎりぎりだったという。あと数年後だったら、何ともならなかったかもしれない。今回はたまたま解体車を持っていた某社のおかげで部品供給を受け、何とかなったのだから。

今回のサンク・カブリオレは瀕死の状態まで行っていた。救世主が現れなければ、おそらく廃車になる運命だっただろう。だからこそ「夏休みの宿題は計画的に」だ。溜め込んで、8月31日になってから慌てても遅い。今回は超絶な頭脳を持つ親戚のスーパーお兄ちゃんが現れて、宿題を全部引き受けてくれたからいいものの、そんな人は滅多にいないのだから。とくに古いクルマとこれからも楽しく、快適に付き合っていきたい方ならなおさらである。

 

PHOTO & TEXT/Morita Eiichi

 

エンブレム_8071990y RENAULT Super 5 GTX Cabriolet
全長×全幅×全高/3590mm×1590mm×1380mm
ホイールベース/2410mm
車両重量/880kg
エンジン/水冷直列4気筒SOHC
排気量/1721cc
最大出力/54kW(73PS)/5000rpm
最大トルク/127Nm(13.2kgm)/2750rpm

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2 Responses to “RENAULT Super 5 GTX Cabriolet”

  1. jeroen より:

    Hi,

    I have a website about this wonderful car; http://www.ebsregisterholland.nl and a facebookpage for EBS owners;

    http://www.facebook.com/groups/ebsregisterholland/

    Greetings,

    Jeroen from Holland

    • すずき@PMG4 より:

      Thank you for the comment.

      This article is written in Japanese so maybe you cannot read. sorry.
      So anyway, there are not so many Super5 EBS Cabriolets in Japan. I think a few or less exists now.

      I heard that This one was based on Super5 GTX, Imported as a testnominal car to import and registered.
      when we got this, the condition was awfully sooooo messy, everybody said no one could help with this.
      A New Owner, owes the cost for soft top replacement and body paint and mechanical trouble and we made re-register, so the car runs once again in Japan. and took a picture on this entry.

      But unfortunately we are not sure where this one exist now.

      Sorry for my poor English.
      AKIHIRO Suzuki

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