RENAULT Lutecia RENAULT Sport 2.0 16V

人間の価値観は年を取るごとに変わっていくものだと思う。その変化を、おそらく自覚できることは少ない。もしはっきりと自覚できるとしたら、同じモノに対して時代を超えて触れ合ったとき、その印象が若いころといまとではこんなに違うものか、と感じた瞬間。そう考えると、モノの価値とは何だろうと思う。モノには絶対的な価値などなく、相対的なものなのだ、という当たり前のことをあらためて思い知らされた。モノの価値が180度変わる瞬間。それを味わったとき、若気の至りを痛感するのだろうか。それとも年を重ねたことにより、さらに審美眼が磨かれたと誇らしく思うのか。

フェイズ1のおっとり系の顔から精悍な顔つきになったフェイズ2。このマイナーチェンジでは、外観のデザイン以上に中身にもそうとう手が加えられているビッグマイナーチェンジ

そういえば、これやってなかった。このコーナーではさんざん登場してきた感のあるルーテシア2 RS。でも、フェイズ2はやってなかった。フェイズ1ばっかりだった。
ルーテシア2は1998年に欧州で発売され、1999年にRSが追加(フェイズ1)。その後、フェイズ2に移行し、日本には2002年から導入された。フェイズ2への移行はいわゆるマイナーチェンジだが、全体の50%以上が刷新されたビックマイナーチェンジである。
すぐに分かるのがフロントマスクだ。グリルは真ん中にエンブレムを置き、左右に分かれたデザインを採用。この時期、メガーヌやヴェルサティスにもこのフォーマットが使われているから、ブランドイメージ統一のための変更なのだろう。フェイズ1がおっとり系のテイストだったので、かなりイメージが変わったのではないか。サイドモールはブラックからボディ同色へ。アルミホイールも15インチから16インチに拡大している。リアはエンブレリアはフロントに比べてそれほど大きなデザイン変更はない。ゲート中央に配されたエンブレムの中央がゲートのオープナーになっているのを知らないと、いつまでも外からゲートを開けられないことになるムがハッチの中央に取り付けられ、中央がゲートのオープナーボタンの役割を果たすというギミックが凝らされている。リアコンビネーションランプもデザインが変更になっているし、アンテナの位置もルーフの前端から後端へ移設された。ただ、このアンテナは角度が調整できないので、高さ制限のあるパーキングではちょっと不便かもしれない。
インテリアはダッシュボードを横切るようにシルバーの加飾帯が備えられ、メーターカバーには2つのコブができた。センターパネルは時計を挟んで上下にトレイが追加。エアコンはオートタイプになり、その下にはカップホルダーを新設。ステアリングはアルカンタラから本革巻きへ。

インテリアはフェイズ1より格段にデザイン性が上がり、質感も豊かになった。真横に入ったシルバーの加飾帯が印象的だ

シフトノブはアルミからアルミとレザーのコンビネーションタイプへ。シートバックに入る「RENAULT Sport」のロゴは、モノトーンへ変更されているし、地味にグローブボックスの容量も拡大している。インテリアについては、全体的にフェイズ1よりも質感が向上し、ちょっと高級になったような気がする。
安全面でも運転席と助手席のエアバッグ膨張率が変えられるタイプになったり、シートベルトプリテンショナーとフォースリミッターの機能が、後席左右にも装備されるようになった。フェイズ1では後席だけだったチャイルドシート固定装置は、助手席にも付くようになった。細かな変更だが、ファミリーにはありがたい。

 

前席はシートバックに入った「RENAULT Sport」のロゴがホワイトになり、シックな印象に。シートのボリューム感、座り心地はフェイズ1と変わらず、素晴らしいとしか言いようがない

あれ? Part 1

動力性能でいちばん大きな変更は、電子制御スロットルの採用だろう。これにともない最高出力は127kW/6250rpmから124kW/6000rpmに落とされ、ピークパワーよりも日常使う回転域で扱いやすさを重視したセッティングとなっている(最大トルクはそのまま)。
じつは以前、フェイズ2に乗ったことがあった。そのときはこの電子制御スロットルの反応が鈍く、それが気になってしまい、あまりいい印象がなかった。明らかにアクセルペダルとスロットルの間に何か得体の知れないものが介在しており、右足の動きとエンジン回転数の上下が、どう後席は3点式シートベルトが中央の席にも用意。レザーとアルカンタラを組み合わせた素材感もいいにもマッチしない。レスポンスが良すぎるのも扱いにくいが、これは悪すぎる。当時はそう思ったものだ。
しかし、いま乗ってみるとなぜかそれが気にならない。「あれ? あのとき感じたのは何だったんだろうか」と自分でもよく分からなかった。レスポンスが気にならないのは、もしかしてあのオイルのせいか。気のせいかもしれないが、感覚を研ぎ澄ませてみると、エンジンの振動が軽減され、室内は静かになっている。でも、排気音はちゃんと分かる程度に残されているように感じた(マフラーが社外品に変更されていることもあるだろう)。

 

エンジンはスペックこそ127kW/6250rpmから124kW/6000rpmに落とされているが、日常での使い勝手はこちらほうが扱いやすい。街乗りでは、フェイズ1のジャジャ馬感が薄れた印象だが、ひとたび踏めば官能の加速感がやってくるあれ? Part 2

心なしかステアリングの感覚もマイルドになっているような気がする。電スロ採用なら、パワステも電動でしょうと思いきや、フェイズ2のRSのみ油圧のままだ。しかし、油圧でここまでマイルドに制御できるのはすごい。完全に電動パワステだと思っていた。
これらの感覚を一言でいえば「洗練」。それ以外の言葉が出てこない。ただ、RSの牙は丸められたわけではない。アクセルペダルをグッと踏み込むと、あの後ろから「ドンッ」と押されるような加速は健在だ。4000rpmあたりから「VVT(可変バルブタイミング機構)」によって音が変わり、さらにシャープに加速していく。ここで2度目の「あれ?」である。「こんなに吹け上がり方が気持ちよかったっけ?」。前回乗ったときは、アクセルレスポンスのことばかりに気を取られ、この吹け上がりの気持ち良さに気づいていなかったということか。それとも、またしてもあのオイルのせいなのか……。
思い切り加速した後は、ブレーキングだ。ここでもフェイズ1にあったような”カックンブレーキ”が軽減され、かなりコントローラブルになっている。もちろん、効きはまったく問題ない。
各所に気を配っていくと、違いが数珠つなぎのように現れてくる。どうやら足回りもフェイズ1と違っているような気がしたのだ。実際、調べてみるとサスペンションはスプリング、ダンパー、ブッシュの設定が変更されているようだ。フェイズ1にあった低速域での「ヒョコヒョコ」した動きは鎮められ、簡単に言えば乗心地が良くなっている。しかし、感じたのは、乗心地よりもロールした後のもうひと踏ん張りがあること。フェイズ2はフロントのスプリングが縮み切ってからも、さらに耐えようとする動きが感じられるのだ。もちろんこれはサスペンションだけの働きではなく、シャシーそのものにも手が入っているからだろう。

 

タイヤサイズは195/50R15から195/45R16に変更されたが、乗心地が損なわれているとは感じなかった(むしろ上がっていると思った)。ホイールは当時、SiFoが販売していた軽量の鍛造アルミ。いいデザインだと思う洗練とメリハリ

フェイズ1の印象を、私は「斧」だと思った。シャープな切れ味のカッターナイフというよりは、斧のような粗野な武器でガツンと一発、強烈な印象を残す。その荒々しさがフェイズ1の魅力なのだと。だから、きっと若い頃はそこに惹かれたんだろう。あんな癒し系の顔をしながら、アクセルを踏み込むと猛烈なトルクが押し寄せてくる。そのジャジャ馬感が刺激的だった。
反対にその後に乗ったフェイズ2は、フェイズ1の荒々しさに比べると、かなり物足りなかった。先にも話したが、アクセルレスポンスの悪さがどうにも気に入らず、それ以外にも美点があったにもかかわらず、目に入ってこなかった。
しかしどうだろう。あれから月日が経ち、40代となったいまでは、フェイズ2の魅力がよく分かるようになった。アクセルレスポンスの悪さ? たしかにフェイズ1に比べれば、若干鈍くなっているかもしれない。でも、クルマの魅力はその1点ではない。もっと全体を俯瞰して見ろよ。いまになって若い自分にそう言いたくなる。
日常で使う範囲により磨きをかけ、しかし、RSたる部分はしっかりとキープしていく。「洗練とメリハリ」。フェイズ2のテーマはそこだと思う。「大人のホットハッチ」というと手垢がつきすぎているが、印象としてはそう。40代、50代になっても乗っていたくなるクルマだと思う。

PHOTO & TEXT/Morita Eiichi

 

2005y RENAULT Lutecia RENAULT Sport 2.0 16V
全長×全幅×全高/3810mm×1670mm×1410mm
ホイールベース/2475mm
車両重量/1100kg
エンジン/直列4気筒DOHC 16バルブ
排気量/1998cc
最大出力/124.3kW(169PS)/6250rpm
最大トルク/200Nm(20.4kgm)/5400rpm

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