【CROSS TALK】中古車の価格はどうやって決まるのか?

【某月某日】RENOにて

Morita(以下、M)/(店の前の在庫車をチラチラ見ながら)こんにちは。

Suzuki(以下、S)/ああ、どうもー。

M/なんか新しいクルマが入ってますね。

S/トゥインゴ2 RS。オランダ仕様の中古並行車です。

M/へぇ。いいですね。いくらくらいで出すんですか?

S/そうだねぇ。85万円くらいかなぁ。

M/なるほど。あのつねづね疑問に思ってたんですけど、中古車の値段ってどうやって決めてるんです?

S/ああ、そう言われると一般の方は知らないかもしれないね。じゃあ、その話でもしますか。

中古車の値段は何で決まるのか?

 

S/中古車の値段は何で決まるのか? それは「いくらで仕入れられるか」で決まるんですよ。この仕事、30年近くやってるけど、ぶっちゃけ言うとそれ。

M/おお! いきなり結論(笑)。

S/いくらで仕入れることができて、いくらで売れるのか? で、いくらで売れるのかというのが、世の中でいうそのクルマの相場になる。

M/そうですね。

S/この年式でこれくらいの走行距離で……とかだと、だいたいこれくらいの値段だよねっていうのは、神の見えざる手によって自然にバランスして決まってくる。

M/アダム・スミスですね。

S/ただし! その理屈が通用するのは、カサの多いクルマに限る。

M/ああ、台数が多いクルマ。たしかに。

S/たとえば国産車のAというクルマはどこにでもあって、この色は人気があるから高い、この色は人気がないから安い、距離が多いと安い、少ないと高いみたいな感じで決まっていくんだけど、僕のいるこの業界はそういう理屈から外れたところに存在してるから。

M/ええ、ええ。

S/じゃあ、僕らの業界はどういう理屈があるのかというと、ひとつは業界用語で「ナイ高」っていうんだけど。

M/ないだか?

S/そう。「モノがないから高い」っていう意味なんだけどね。

M/ああ、なるほど。

 

中古車屋さんの仕入れ方は、
買い取り、下取り、オークション

 

S/ちょっと話が飛ぶけど、いまの中古車屋さんって、どういう仕入れ方をしてるかというと、買い取り、下取り、中古車オークション(USSとかJUとか)が主な方法。

M/全部聞いたことがあります。

S/さっきのカサが多い普通のクルマの場合、相場があるので「だいたいこれくらいの値段で買えるよね」と分かる。でも「ナイ高」のクルマが欲しいっていう場合は、お客さんが「こういうクルマを探してきて」とクルマ屋さんに依頼してることが多い。

M/めったに出ないから何としてでも落とすしかない、と。

S/そう。中古車オークションっていうのは、日本でいちばん高い値段を付けないと買えないシステム。つまり日本でいちばん高いクルマになる。

M/たしかに言われてみればそうですね。客の依頼で絶対に欲しいとなると、クルマ屋さんはどんどん入札していきますもんね。

S/うん。「お金はいくらでも払うから買ってきて」っていうお客さんもいるくらいだから。そういうのを「客押し」っていうんだけどね。

M/なるほどぉ。

S/そうすると、落札したクルマはどえらい高いクルマになる可能性がある。「客押しで化けたねぇ」なんて言われる。うちのクルマは、だからそっちタイプだよね。大衆車だけど、左ハンドルマニュアルなんてそもそも一般的じゃないから、一般的な相場感覚では値段は付けられない。

M/じゃあ、下取りは?

S/下取りは、うちが過去ずっと看ているクルマならいくらで売れるのかを考えながら「これくらいで下取ろう」と値段を決める。ただ、うちのお客さんのクルマを下取る場合「これくらいで付けないとかっこ悪い」という意識が働くことが多い。だって●●万円でクルマを買ってもらって、この前、アレとコレを直してたし……これくらいの値段を付けないと申し訳ない、となる。

M/過去を知ってるクルマですもんね。

S/これまでお世話になったし、また新しいのを買ってもらえるんだから、そうしなきゃいかんよねっていう気持ちが大きいかなぁ。

M/そうなると必然的に下取り価格が高くなって、売値にも反映されてくると。

S/そういうことになるね。

M/買い取りの場合は?

S/下取りの場合は、1台売れて、1台帰ってくるわけだから、台数的にはプラスマイナスゼロになるからいいんだけど、買い取りになると在庫は増える、お金は出ていく、その分、リスクを抱える。知らないお客さんのクルマだと、過去の履歴が分からないので、当然リスクは増えるよね。

M/たしかに。

S/だってさ、わざわざうちに「このクルマ買ってください」って来るってことは、自分が買ったお店でも買ってくれないってことでしょ? そういうクルマは要注意だよね。

M/そうですよね。

リスクがあることも想定しなきゃいけないから、必然的に厳しい金額を提示せざるを得ない。でも「これは欲しいな」と思わせるクルマだと話は違ってくるけどね。

M/ああ、それは危ない(笑)。

S/まぁ、そういうことを諸々考慮して買い取りの場合は値段を決める感じかな。

 

基本的に人がいらないと判断したクルマが
集まってくるのが中古車オークション

 

M/スズキさんって中古車オークションでクルマを買うことってあんまりないですよね?

S/そうだねぇ。中古車オークションに出てるクルマって基本的に人がいらないって判断したクルマだからね。もちろん全部が全部そうではないけど。

M/まぁ、そうですよね。

S/たとえばさ、あるお客さんに車検の相談をされたとするよ。前回、預かったときにドライブシャフトのブーツとかステアリングラックのブーツとか交換しなきゃいけないなぁって感じだったから、それやらないと車検通らないよ、と。どうせやるならブーツ類はまとめて交換するべきだし、なんだかんだやるとそれなりにかかるよ、と。お客さんはそういうことならちょっと考えようかなぁ、ってなったクルマが中古車オークションに集まってくる。

M/なるほど。

S/クルマ屋もさ、いいクルマは自分のところに置いておきたいと思うはずだよ。これはいいクルマだから、うちのお客さんで誰か買わないかなって。でも、これはうちに置いといてもしょうがない。お金に換えたいから中古車オークションに出すか、と。そう思うのが当然じゃない?

M/そうだと思います。

S/すべてではないけど、人が買わないものが中古車オークションに集まってる。だから、僕はここ2、3年は中古車オークションで買うのを止めてるんだよね。ひどいクルマしかこねーなって印象があるから。

M/買うときも現車を細かくチェックできるわけじゃないですしね。

S/来てから「ムハーッ!」ってこともままある。欲しかったからしょうがないけど。日本でいちばん高くかったから、もちろん安くない(笑)。当たり前か。

 

仕入れ価格以外に値付けに関わる要素とは?

 

S/中古車オークションでもそうやってお客さんから頼まれたものなら、すぐに売れるからリスクは少ない。でも、それだけでは成り立たないから、基本的に在庫を持ってなきゃいけない。僕が扱っているクルマなんてあるときに買っておかないと、次いつ仕入れられるか分からないから、多少高くても買って在庫しておかなきゃいけない。だからうちのクルマは妙に高いって言われるのかもしれないね。

M/そういうことですね。でも、実際の値付けは、仕入れる値段だけで決まるわけじゃないですよね?

S/うん、クルマを買ってきてからの整備や加修もしなきゃいけないから、それにどれだけのコストがかかるのかも値付けに関わってくる。

M/そうですよね

S/たとえば、そのトゥインゴRSの場合、ボディに色あせが多々ある。前のオーナーがいじったところを元に戻さないとかっこがつかない。リアタイヤにひっかけた跡があるとか、そういうのを全部やろうとするといくらかかるのか。もちろん全部やれば、その分高くなるよね。

M/当然ですね。他にも値付けに関する要素はあります?

S/あるよ。それはね……。「僕が欲しいかどうか?」

M/(笑)

S/トゥインゴRSは付き合いのあるクルマ屋さんから仕入れたんだけど、提示された金額を元にいろいろと考えていくと、本来であれば見送るところを結局買ってしまった。

M/欲しかったから。

S/そう。うちは左マニュアルの小さいクルマは大好きなので、これは僕が買うべきでしょうと。

M/ほぼ義務感で買ってる(笑)。

S/ほんとにそう。ちょっと前にトゥインゴ2 RSのフェーズ2がいたんだけど、あれもなかなか売れなかった。それは分かってるんだけど、買っちゃうんだよね(笑)。バカだなぁと思いながらも。

M/ははは

S/だからクルマを引き取りに行った帰りにクルマの中で「買っちゃったなぁ。どうするんだよ、これ」と思いながらも「まぁ、しゃーないか。誰か買うよ」と。

 

高いクルマを売る能力
それが「営業力」

 

S/で、クルマの値段を「いくらにしよう?」と考えたときに、トゥインゴRSなら60万円前後にすれば、多くの人が「おっ!」と思ってもらえて売れやすいのかもしれないけど、いろいろやると無理だな、と。じゃあ、60万円以上する高いトゥインゴを売るためには、何が必要なのか?

M/なんでしょう?

S/かっこつけて言うと「営業力」なんだよね。

M/なるほど。

S/「これだけやるから、この値段になるんだよ」ということをお客さんに説得できるか。でもさ、そもそもそれをするために営業って仕事があると思うし、世間の相場もしくはそれよりも安い値段で売るんなら、それは営業の仕事じゃない。

M/ですよね。それなら営業じゃなくてもできる。

S/安いんなら営業しなくても誰でも買ってくれるもんね。高いけど、それを売ってくるのが営業の使命だし、そこに営業力の差が生まれると思っている。僕はそれができているとは思っていないけど、値段に見合ったクオリティを出すための努力はする。仕事としてやるからには、最低限ここまではしっかりやらなければいけないと思っているので、必然的に高くつくわけ。本来ならそれを売るための営業を僕がしっかりやらなきゃいけないんだけど、幸いうちのお客さんはちょっとおかしいので……。

M/そんなことをしなくても買ってくれる(笑)

S/ありがたいことです。もっと言うと、営業の仕事は、その逆もある。お客さんの要望を踏まえて、柔軟に別のプランを組めるかどうか。

M/ふむふむ。

S/例えばタイヤ。お客さんが一般的なタイヤ以上の性能を求めてるなら、それに対応すべきだし、将来的にタイヤホイール換えるつもりなら、そのままでもいい案もある。内外装もそう。瑕疵はそれで追々、もしくは自分で何とかする方なら、いま施す必要ない場合もある。

M/そうですよね。お客さんの意向を汲み取るのも営業の仕事。

S/さっきのトゥインゴRS、 前のバンパーやボンネット、屋根の一部を修整・塗装せんでいいなら、10万円くらいディスカウントしなきゃ価格整合性が取れない。そういうのを究極まで行ったら、もう現車あるがままでいいって場合もあるよね。こっちは手数料程度の仕事。それで某ネットオークションの値段に近づくかも知れない。いや、クルマ屋が介在してる時点ですでに高価になっちゃうんだけどもさ。

M/ええ、ええ。

S/まぁ、これは業をなす僕らの沽券に関わる、ってか飯の種なくなったらおまんまの食い上げだから、そこを否定されるならそもそもクルマ屋になんか頼らない方がいい。都合がいいときだけってなら、こちらから願い下げ。相談に応じてるだけこっちは赤字だって言わざるを得ないからさぁ。

M/そうですよね。

S/そういうわけで、個別な対応は、お客さんによって最適なプランを組むべき、とも思ってる。

 

あれこれ手をかけちゃうから、
高くなる

 

S/あと、そのクルマがうちにいる間にあれこれあって手をかけちゃうと、その分クルマの価格に上乗せせざるを得なくなる。

M/そうですね。

S/たとえば、うちにあるマニュアルのグランデプント。あれ、なかなか売れないんだけど、うちに置いてある間にオルタネーターが逝かれた。さすがにこれを直さないと動けないので、どっかに中古でもないかなぁ、と探してたんだけど出てこないよね。クルマがクルマだし。しょーがないので、新品入れるかと。そうすると10万円くらいは上乗せされちゃうよね。

M/うーん、仕方ないとはいえ、なかなかつらいですよねぇ。

S/そうだよね。で、そこでやめときゃいいのに、あれ、得体の知れないキーレスが付いて、それがなんかイヤだったの。グランデプントのリアゲートって電動ロックになっていて、車内からしか開けられないんだよ。だから、キーレスで外からリアゲートも開けられると便利だよね、と。調べてみると、それがあったんだよ。

M/ああ、ヤバい(笑)

S/付けちゃうかぁ、と。

やっぱり(笑)。

S/やっちゃうんだよね、ついつい。そんなのお客さんが決まって、必要ならやるってことにすればいいのに、やっちゃうんだよねぇ。

 

でも、タイヤは換えない
なぜ?

 

S/中古車って、一般的にはアレも壊れた、コレも壊れた、車検も近づいてきたっていう状態で売られることが多いから、タイヤも山のない状態で来るときが多い。そういう場合、他の中古車屋さんはどっかの安いアジアンタイヤを新品に交換するみたい。「タイヤ新品」って謳えるから。

M/まぁ、どこのタイヤであろうと新品には変わりないですもんね。

S/でも、うちのいかんのは、さっきの逆でタイヤは換えないんだよ。だって次のお客さんがどういう乗り方をするか分からないんじゃない。街乗りしかしない人もいれば、本気で走る人もいる。買ったらすぐにホイール換えるって人もいる。

M/タイヤについては好みもありますしね。

S/だからタイヤはそのままで「お好みで換えますよ」という商談をする。でも、一般的には違うかもしれないね。

M/なるほど。

S/外装とかも小さなキズまで気にする人もいれば、走るのに関係ないから気にしないっていう人もいる。だから、そういうのはお客さんと相談してやることが多いね。走る、曲がる、止まるといった機関的なところや車検に関わるところは、あらかじめやっておくけどね。

 

お客さんとの間でクルマのスパイラルアップができている
ちゃんと手がかかってるクルマが安いわけがない

 

S/そもそもの話だけど、手をかけた分、クルマは良くなるわけだよね。そういうのを納めていれば、乗る人も「ああ、いいのを買ったな」と喜んでもらえるわけだし。でも、いまはそういうことやってると「高い」とか言われて一蹴されちゃうんだよ。みんなビール飲みながら、カーセンサーとかグーワールドとか見て、安い価格順でソートして見て、高くなると「たっけー、こんなの誰が買うんだよ」ってモノも見ずに言ってるだけだから、いいんだけど。好きにしなさいって。

M/そういう人は言ってるだけで買う気がないだろうし。

S/それにさ、中古車ってそもそも定価なんてないじゃん。あるのは相場だけで、そんなのはコロコロ変わっていく。なのに、何を基準に高いとか安いとか言ってるのか。

M/たしかに。定価があるならそれに対して高い安いは言えるけど、相場は定価じゃないですからね。

S/しかも、中古車の流通経路によって、クルマの値段って大きく変わる。某ネットオークションで買うのがいちばん安いよね。出品者から直接買うわけだから。でも、クルマ屋さんに下取りとか買い取りでクルマが入って、それを中古車オークションに出すとしたら、出品手数料、落札手数料、陸送費などがかかるよね。クルマ屋さんは売るときに整備費や自社の利益など、そういうのも全部上乗せしなきゃいけないでしょ? どう考えたって高くなるよね。

M/ですよね。

S/値段だけ見て「これ安いじゃん」って実際に見に行ったら、得体の知れないタイヤ履いてて、他にもいろいろ変なところが見つかってってことは充分あり得るよね。というか、そりゃ安いわなって話ですよ。

M/ごもっとな話です。

S/反対にクルマ見に行ったら、ちゃんとしたタイヤ履いててその他にも見苦しいところはなくて、納めるにあたって本人のクルマの乗り方をヒアリングしながら、それに合ったオイルとかを選んでってやっていったら、そりゃ安くはないよね。結果的に乗って満足できるのはどっちかと言ったら言わずもがなだよね。

M/人間って「安い」という強力な武器の前に、平常心を失うもんなんですよねぇ。

S/まぁ、分かりやすいよね。数字だからさ。モノのクオリティは数値化できないから。

M/ついつい安いものにつられてしまう悲しい生き物ですね、人間って。

S/僕も普段はそうだから、その気持ちはよく分かるけどね。

M/でも、クルマは日用品みたいにいくらでも代えの利くものじゃないですからね。

S/それもそうだし、それを覚悟の上ならいいと思うよ。「安いからこんなもんか」と。

M/そうですね。でも、あらためて聞くと、中古車の値付けには別にマジックがあるわけじゃなく、至極まっとうな理屈で成り立っているんですね。

S/いくらで仕入れるか。いくらで売れるか。その間で採算が取れるか。でも、うちの場合は、そんなドライに計算できるものではなく、そこに自分が欲しいかどうか、とか、そのクルマが過去にどれだけ手をかけてきたか、とかそういうのが加味されるので、セオリー通りにはいかない。

M/ははは。

S/いやー、ちょっと高いけど、欲しいから買っちゃえ! とか。これやったら世間の相場よりも高くなっちゃうけど、いいや、やっちゃえ! とか(笑)。

M/そういうやり方でもスズキさんが続けられているのは、それを分かってくれるお客さんがいるってことだし、お客さんとの間でクルマのスパイラルアップができているというか。だって、ちゃんとしたクルマをその手間相応にかかった価格で買ったお客さんは、クルマを大事にするだろうし、きっと何か不備があってもそのままにしないでしっかり直してくれるでしょう。そういうちゃんとしたクルマなら、もし買い替えるときもスズキさんは高い価格で下取ってくれるだろうし、そのクルマを売るときも、さらに手を加えてより良いものにすれば、クルマ自体の寿命も延びるんじゃないですか?

S/そうだね。そういうのが成り立っていけばいいね。単に価格だけを見て「高い」という人は、そのスパイラルの中には入れないだろうしね。

 

左ハンドルマニュアル車どころか、
ガソリン車がなくなっていく時代

 

S/中古車オークションで売ってるクルマのクオリティがあんまり高くないから仕入れなくなったというのはもちろんなんだけど、そもそも欲しいと思えるクルマがなくなってきたのも大きな理由。左マニュアルでそこそこ楽しいクルマって、中古車オークションであんまり出てこない。ほら、10年前くらいにあった「ラテン車2000年問題」。左マニュアル車が正規輸入されなくなって極端に減った問題だけど、そこから20年経ったいま、ごく一部の香ばしいモデルか、並行輸入されたものにしか左マニュアルは存在しない。全体で見れば、もう皆無と言っていいほどないからね。そうなると左ハンドル原理主義のうちみたいな店は仕入れるクルマがない。そこで当時の僕はそういうクルマを集めることをせず、ノホホンと暮らしてたのが最大の過ちなんだけど……。でも、今度は左ハンドル車どころか、ガソリン車がなくなるという事態に直面するわけだから。同じ轍は踏んじゃダメだよね。

M/僕もそうだけど、スズキさんとこのお客さんもできるだけ長くガソリン車に乗りたいと思うでしょうからね。僕ら客がお店を支えないと(笑)。

S/まぁ、不当に利益を得ようとはしてないので、これまで通りやってくれればいいんだけども。あと、いまからさかのぼって20年くらい前のクルマに乗っている人は、大事にしてほしいね。

M/ああ、プジョー106とか。

S/以前も行ったけど、純正部品がなくなり、維持していくのが難しくなっていくから。次はルーテシア2とかカングー1がそういうクルマの仲間入りしてくるから、そのオーナーさんも。たぶんそういうクルマの中古車価格も上がってくると思うよ。もちろん、ちゃんとしてるクルマの場合ね。

M/維持していくのが難しいからこそ、ちゃんとしてるクルマが安いわけがないですもんね。

S/そう。クルマって古くなるにしたがって安くなるけど、底を打った後は高くなるから。古くなりすぎると高くなる。最近だと、トゥインゴ1がその辺りカモだけども……。

M/ああ、そうかもしれないですね。

S/でも、そこまで世界的には盛り上がってないんだよね。向こうじゃトゥデイと同じような扱いだから、壊れたら直さず捨てちゃう。部品の再生産もされない。あとはその値段が通るかどうか。

M/名車だと思うんですけどねぇ。

S/ローバー以前のミニや空冷ビートルはそれが通るから、真っ当なクルマがそれ相応な値段で流通してるよね。じゃあ、キャトルはどうなのよ? って考えると、哀しいカナそれもミニやビートルに及ばなかったりもする。

M/パンダ1は?

S/トゥインゴ1と同じく部品供給が壊滅的に皆無……。そもそもそういうの直して乗るってのは、世界的に考えても一般的じゃない。 一般的になれれば、ミニやビートルのようになれたのかも知れないんだけどねぇ。まぁ、ラテンの大衆実用車じゃ無理かなぁ。基本とっかかりがカッコだけな客層だからねぇ……。

 

高く買ったクルマは高くなる
安く買ったクルマは安くなる

 

S/安い中古車は手に入れてから先、あれこれ手がかかって、車検のときにクルマ屋さんから「30万円です」と言われても仕方ない。でも、ちゃんと手をかけている中古車なら、初回の車検くらいまでは消耗品の交換くらいで済むよねって感じになる。そういう価値を提供するのがうちの役目だと思ってる。やらなきゃいかんことは、クルマを買うときにひと通りやっておいてほうがいいしね。

M/ですよね。それぞれバラバラにやってると結果的に高くつく。

S/オートローンを組むならなおさら。高い方が金利も安くなるからね。そういうノウハウを知っているのがクルマ屋だし、それを提案していくがクルマ屋の存在価値なんだから。

M/なるほど

S/ということで、中古車の「価格はいくらで買えたかで決まる」。これ、僕が新卒で入社した東京の某目がディーラーにいた先輩の言葉なんだよね。

M/そうなんですね。

S/高く買ったクルマは高くなる。安く買ったクルマは安くなる。

M/当たり前のことですけど、説得力があるなぁ。

 

TEXT & PHOTO/Morita Eiichi

 

 

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